無線 LAN を使ってみる

HARDWARE REPORT


無線 LAN

先日、Victor 社の InterLink MP-XP741 というモバイルノート PC を購入したのですけど、それには標準で、無線 LAN の機能が備わっていたのでした。

その目的としては、おそらく次世代のビジネスなどで必須となるなどのことだと思うのですけど、それはともかく、小型だから非常に持ち運びやすいこともあって家庭内の小さな空間であっても LAN ケーブルに支配されてしまうのは何かともったいない気がします。

なのでせっかくの機会でもあるし、実験も兼ねて無線 LAN を体験してみることにしました。

 

ともあれ体験してみるにも無線 LAN について詳しく分からないので、予備知識を集めて行くことにします。

無線 LAN には3種類の方式が存在しているようです。11a, 11b, 11g の3種類で、これらは通信速度と得手不得手とで特徴が違ってくるとのことです。調べてみると次のような感じでした。

IEEE802.11a 54 Mbps 5.2 GHz OFDM 伝送距離は短いが、家電などのノイズを受けにくい。障害物の影響を受けやすい。
IEEE802.11b 11 Mbps 2.4 GHz DS-SS 機材が安価で、大きなファイルを転送するような場合でなければ速度も十分。伝送距離は長く、障害物の影響も受けにくい。
IEEE802.11g 54 Mbps 2.4 GHz OFDM 伝送距離は長いが、家電などのノイズを受けやすい。障害物の影響は受けにくい。

 

どの程度の影響を受けるのかは分からないのですけど…。

11a はノイズの影響を受けにくいので安定した通信が期待できるものの、障害物の多い部屋などにはむかないそうです。ホールや教室など広い空間での使用に適しているとのことでした。また、屋外での利用は禁止されているとのことで、屋外をはさんでの利用なども禁止とのことでした。

11b は伝送速度が 11 Mbps と遅いのですけど、それでも大きめなファイルをあまり転送しないような利用や、特にインターネットを普通に使う程度では十分実用的な速度です。安価であり、ノイズの影響こそ受けやすいものの、障害物の影響を受けにくく、公共の場で提供される無線 LAN はこの規格が用いられることが多いそうです。

11g はノイズの影響は受けやすいものの、障害物の影響を受けにくく、速度も 55 Mbps と速めなので一般家庭に向いているそうです。また、屋外での利用も可能とのことなので、実用に足るかは別として、とりあえず屋外をはさんでの利用もできるようです。

 

このような感じのようだったのですけど、個人的には 11a がいちばん家庭、というか部屋での利用には向いているような気がしてみたり…。

ともあれお店で無線 LAN の製品を眺めてみると、11g + 11b の2つの規格だけに対応した製品が3つに対応したものよりも安かったので、とりあえずそれにしてみることにしたのでした。

 

ELECOM LD-WL54G

今回購入したのは ELECOM 社の LD-WL54G/PACK という製品です。

無線 LAN を利用するには無線を受けるアクセスポイントと、それと通信を行うアダプタが必要になります。今回のクライアント PC には最初から無線 LAN のアダプタが搭載されていたのでアクセスポイントだけでよかったのですけど、アダプタ付きのパッケージが +2,000 円ほどの上乗せで販売されていたのでそちらにしてみました。アダプタカードはとりあえず、また別の機会で使おうと思います。

アクセスポイントを準備する

さっそく、アクセスポイントの設定を行ってみます。

LD-WL54G の場合、Web ブラウザを用いて設定を行う必要があるので、まずは LD-WL54G を LAN に接続する必要がありました。そして最初は 192.168.1.240/24 が設定されているそうなので、それと通信可能なネットワーク設定を行います。

一時的にそうして通信可能な状態にしたあと、自分のネットワーク環境に合う設定に調整したうえで、あらためてアクセスポイントの設定となりました。

 

Web ブラウザでアクセスポイントの管理ページに接続します。

まずは [無線 LAN 設定] の項目を確認してみると、とりあえず SSID を調整する必要がありそうでした。この ID を使って接続するネットワークを判別するようなので、まずはこれを設定しておきます。

"AP ステルス機能" というのは、電波の届く範囲にある SSID の一覧を取得する機能に対して応答しない機能のようです。これを有効にしておくと不用意に見つけられる事がなくなるので、不正に利用される可能性が低くなるとの事でした。とりあえずは無効にしておくものの、落ち着いたら有効にしておくのが良いかもしれないですね。

"覗き見防止機能" というのは、このアクセスポイントを使って通信しているクライアント同士が直接アクセスするのを防ぐものだそうです。家庭内ならあまり気にしなくても良いとして、不特定多数の人が利用するような場合は有効にしておくのが良さそうです。

 

セキュリティ設定

そして、肝心なのがセキュリティ設定。

セキュリティは WEP, WPA-PSK, WPA-EAP の3種類に対応しているようです。無線 LAN の場合は盗聴や不正利用などに備えて、セキュリティ設定は忘れずにしておきましょう。

WEP キー番号と WEP キーという2つの情報を用いて、通信を暗号化する方法。アクセスポイントとクライアントとで同じものを設定することで通信可能となる。
WPA-PSK PSK (事前共有キー) を用いて認証を行い、通信を暗号化する方法。アクセスポイントとクライアントとで同じキーを設定することで通信可能となる。
WPA-EAP RADIUS サーバを用いて認証を行い、通信を暗号化する方法。RADIUS サーバの情報とそれに登録された共有シークレットを設定することで通信可能となるそうです。

 

WPA-PSK が一般家庭で利用するのに向いているそうなので、今回はそれを使用してみることにしました。

[セキュリティ設定] ページで "WPA-PSK" を選択して、"事前共有キー" と "暗号化方式" を設定してあげれば準備完了です。暗号化方式については細かくは分からないものの、どちらか好きなほうを選べば良さそうです。個人的には "TKIP" を使用してみることとします。

あとは "無線 LAN 設定" にて "AP ステルス機能" を設定しておけば、家庭用としては十分とのことです。心配ならばさらに "MAC アドレスフィルタリング" を使用すれば、とりあえず不正利用の心配は少なそうですね。

 

クライアントを設定する

MP-XP741 に搭載されていた無線 LAN でアクセスを試みる

アクセスポイントの設定が終わったはずなので、続いてクライアントの設定を行ってみます。

こちらもアダプタによって設定方法は変わるかと思いますけど、今回は MP-XP741 に搭載されている無線 LAN を利用するので、それに沿ってお話を進めて行きます。

無線 LAN の種類には、パソコン同士が直接アクセスする ”アドホック” と、アクセスポイントを経由してアクセスする ”インフラストラクチャ” というものの2つの方式が存在するそうです。今回はアクセスポイント経由ですので、インフラストラクチャモードと言うことになります。

 

まず、MP-XP741 の側面にある "無線 LAN ON/OFF スイッチ" を ON にします。

「コントロールパネル」 の 「ネットワーク接続」 を開いて、【ワイヤレスネットワーク接続】 の上で右クリックをして、【利用できるワイヤレスネットワークの表示】 を選択します。

すると先ほどアクセスポイントに設定した SSID が表示されるので、それを選択して 【接続】 ボタンをクリックします。するとネットワークキーを入力してくれと言われるので、これもアクセスポイントで設定した PSK キーを入力すれば、これでネットワークが利用可能となるはずです。

 

ところが何故だか上手く行きませんでした。

接続自体は上手くいったのですけど、DHCP からの情報の取得が上手く行っていないようです。接続確立後、しばらく待たされた後に、上手く確立できなかったようなメッセージが表示されてしまいました。もういちど情報を更新してみましたが、改善される様子なく…。テレビを消してみたり、アクセスポイントを目の前に持ってきたりしてもダメでした。

慣れない部屋で設定しているので、もしかすると接続している HUB 自体が間違っているかもしれないので、改めて自分の部屋で実験してみることにします。

 

自分の部屋の、作業用 PC を配置する HUB にアクセスポイントを接続して、同じように無線 LAN での接続を試みてみましたけど、やはり DHCP から情報を取得することは出来ませんでした。

仕方ないので MP-XP741 の方で固定的に IP などを割り当ててみましたけど、それでもやはり通信できる気配なしです。

 

互換性の問題も一応は考慮して、付属していた PC カードにて接続を行ってみることにします。

 

LD-WL54G/PACK 付属の無線 LAN アダプタを試してみる

MP-XP741 に標準で搭載されている LAN アダプタでは上手く行かなかったので、そのせいとは限らないながらも、とりあえずは LD-WL54G/PACK に付属されていた PCMCIA の無線 LAN カードを使って実験してみることにします。

 

PCMCIA スロットに LD-WL54G/CB を差し込みます。

すると自動的に認識されて "新しいハードウェアの検出ウィザード" ダイアログが現れるので、付属していたドライバ CD-ROM を用いてデバイスドライバをインストールしてあげます。手順どおり進めると "Air@Hawk LD-WL54G/CB Wireless PC Card" のインストールが完了し、これでアダプタを利用できる準備が出来たことになります。

他にも環境設定ユーティリティソフトウェアも付属していましたけど、今回はとりあえず Windows XP の方で直接設定して見ることにしました。

 

設定の方法は MP-XP741 のときと同様に、「ネットワーク接続」 にてワイヤレスネットワークを検索して、見つかったネットワークへの接続を試みます。ネットワークキーを入力して接続ボタンを押すと、やはり接続することこそ出来たものの、DHCP からアドレスを取得することは出来ませんでした。

「詳細設定」 を確認してみましたが、ネットワーク認証は "WPA-PSK" になっているし、データの暗号化は "TKIP" になっているしで、そういう面での設定ミスは無いようでした。

 

WEP にて接続してみる

MP-XP741 でも LD-WL54G/CB でも状況は似たような感じだったので、とりあえず接続方式を WPA-PSK ではなく WEP に変更して実験してみることにしました。

LD-WL54G/AP アクセスポイントの設定を WEP にした上で、LD-WL54G/CB アダプタにて WEP へ接続を試みます。すると、しばらく待たされこそしましたけど、DHCP から正常に IP アドレスを取得して、ネットワーク接続が完了しました。インターネットも無事に利用できるようになりました。

 

WPA-PSK に再び挑戦する

WEP の方は問題なく接続できたことを受けて、改めて WPA-PSK の方を試してみることにしました。

アダプタはとりあえず LD-WL54G/CB です。アクセスポイント LD-WL54G/AP の設定をもう一度 WPA-PSK に戻した上で、アダプタの方も設定をそれに合わせてみます。そうして接続を行ってみると、やはり DHCP からの取得に失敗してしまうのでした。

暗号化を TKIP から AES に変更してみたりもしましたけど改善されずでした。

 

もしかすると DHCP からの応答が遅いだけなのかもしれません。とりあえずコマンドプロンプトを起動して、 "ipconfig /renew" として改めて DHCP からの取得を試みてみましたけど、やはり失敗してしまいました。

インターネットで調べてみると、なにやら WPA-PSK 関連で DHCP からの IP 取得に失敗してしまうというような記載をちらほらと見かけました。その対処法は、というか、その内容は大体がクライアントに対するデバイスドライバの更新情報としてあげられていました。

そこで、ドライバのバージョンを調べてみると、現在インストールされているものは 3.0.0.43 で、ELECOM 社の公式サイトにて提供されているドライバは 3.0.0.43.2 と、若干新しくなっているようでした。DHCP 関連の記載はありませんでしたけど、とりあえずそれをインストールしてみることとしました。

インストールしてみると、ドライバのバージョン表記が "3.0.0.43" が "3.0.0.432" となりました。その上で再び接続を試みてみましたけど、やはり DHCP からの取得は出来ませんでした。

 

WEP 認証で我慢する

相性もあるのかもしれないですけど DHCP サーバ自体は不満を覚えるような遅さでもないし、MP-XP741 の方のドライバについては特に新しいものは公開されていないようでしたので、今回は WEP 認証の方にしておくことにしました。

ところが、アクセスポイントの設定を戻して MP-XP741 の無線 LAN アダプタにて接続を行ってみても、今度は DHCP のみならず、接続さえも確立することが出来ませんでした。

そこで PCMCIA の方の設定を確認してみようと、改めて LD-WL54G/CB を接続してみると、何故だか無線 LAN が接続できるようになりました。そして PC カードをはずすとまた、無線 LAN の接続が出来なくなってしまうのでした。

MP-XP741 の無線 LAN アダプタスイッチを確認してみましたけど ON でしたし、いったん OFF にして ON にしなおしてみても改善される様子はありませんでした。

けれども一度 MP-XP741 を再起動してみると、今度は何事も無かったかのように、正常に接続することが出来るようになりました。

 

良く判らないながらも、とりあえずはこれで問題なく WEP による接続は出来るようになった感じです。

あとはアクセスポイント側の設定で "AP ステルス機能" を ON にして、一覧の自動取得には応答しないように設定してみました。このように設定しても利用可能なネットワークの検出を行ってみると、相変わらず一覧に表示されててしまうようなのですけど、これはもしかすると PC に既に SSID を登録してあるからかもしれないですね。

 

またクライアントの方の詳細設定で、「インフラストラクチャのみ」 に設定しておきました。

ところがまた、アクセスポイントを再起動したりしてみると、再び接続できなくなってしまったのでした。無線状況が悪いのかとも思ってアクセスポイントを目の前に持ってきたり、ネットワーク接続から 「修復」 をしてみても良くならずだったのですけど、インフラストラクチャへの限定の部分を 「アクセスポイント優先」 に戻してみたところ、さくっと接続可能になったのでした。

けれどその状態で 「復旧」 を実行してみると接続できなくなってしまったり、もう一度 「インフラストラクチャのみ」 に設定しなおすとさくりと接続できるようになってみたり、いったん ”ワイヤレスネットワークの選択” から 「切断」 → 「接続」 を行ってみると接続できなかったりなどなど、なんだかシステム自体の動作が不安定な感じがしました。

 

最終的に、切断されてしまったら "ワイヤレスネットワーク接続" のプロパティからワイヤレスネットワークの詳細設定を参照して、特に設定を変更することなく 「OK」 することで復旧することがわかったのでそれで実用的には良しということにしておきますけど…。

 

とりあえず、設定終了

結局のところ、なんだか不安定ながらも WEP による接続にて利用可能となりました。

不安定とは言っても、設定周りが妙な動きをするだけであって、ネットワーク自体は接続されてしまえばとても快適に扱えます。LAN ケーブルに支配されないというのはかなり良いものですね。線がないだけでなんだか机が広く感じられてしまうほどです。

 

ともあれ設定する前は、アクセスポイントに IP アドレスが設定されるのが、それがルータになるのかどうか判らなかったりもしたのですけど、そういうことはないみたいですね。

IP アドレスは DHCP から取得されて、アクセスポイントと同一の IP を取得し、他のクライアントと同じゲートウェイを取得してネットワークへアクセスをするようです。位置づけがなんだか不思議な感じもしますし、どういう仕組みで自分が支配しているクライアントへパケットを通しているのかとかはなんとなく想像できるくらいなのですけど、ネットワークに存在してデータの中継を行う以上、IP アドレスを設定しておく必要がある、という感じなのでしょう。

 

そんなこんなを書いていたら、気が付くと LAN の接続が途切れていたり…。

MP-XP741 の無線 LAN アダプタとは相性が悪いのか、感度が弱いのでしょうか。そう思ってノートパソコンを持ち出して家の隅々まで歩いてみましたけど、一階から二階まで、特に問題なくネットワークを維持してくれるのでした。ちょっと外に出てみても切れそうな気配なく、これはなかなか良い感じかもしれないです。

そして部屋に戻ってみてしばらくするとまた通信が途絶えてみたり。ノイズの影響なのか、それともアクセスポイントが何かしているのか判らないですけど、復旧するのにちょっと手間がかかってしまうのが残念です。

 

その後、また何故だかまったくアクセスポイントへ接続できなくなってしまって、もう一度 LD-WL54G/CB を引っ張り出してきて実験してみたのですけど、そうしたところ、今度はまたこちらでもネットワークを自動的に見つけることが出来なくなってしまっていたのでした。

もっとも、見つからないのはアクセスポイントの設定を "AP ステルス" に変えたからかもしれないですけど、それにしては見つからなくなるのが遅い感じです。ともあれそういう理由かもしれないので、もう一度設定してみることにしました。

 

LD-WL54G/CB の ”利用できるワイヤレスネットワークの表示” を選んで、「ネットワークのタスク」 の中の 「ホーム/小規模オフィスのワイヤレスネットワークをセットアップする」 を選択します。

そうして、SSID や WEP による接続に必要な情報を入力して、接続を試みてみて最初は成功せずだったのですけど、確認してみるとそういえば 「ネットワークキー」 の設定をしていなくて、初期設定では 1 が設定されていたので、それを適切なものに直してみたところ、無事に接続が確立されました。しかも 「切断」 → 「接続」 も上手く行くようになったし、「復旧」 でも正常に復旧するようになりました。通信速度もなにやら 108.0 Mbps になっています。

 

設定内容を確認してみると、さっきまでと比べて "このネットワークで IEEE 802.1X 認証を有効にする" というチェックボックスが OFF になっている程度だったのですけど、設定の保存をパソコンにするか USB 記録デバイスにするかなどの問い合わせがあったので、コンピュータ内部での設定の持ち方も、もしかすると大きく違っているのかもしれないですね。

同じように MP-XP741 の方でも 「ホーム/小規模オフィスのワイヤレスネットワークをセットアップする」 の手順で設定をしなおしてみたところ、正常に接続も出来たし、「修復」 による再設定も可能になったしで、とても良い感じになりました。

通信速度こそ 54.0 Mbps でしたけど、これは仕様通りの速度ですし、きっと "スーパー G" モードだかが働いていないためなのでしょう。

 

なんだかんだでごちゃごちゃしましたけど、次のような感じで上手く行ったことになるのでしょう。

  1. アクセスポイントを "AP ステルス" モードにする。
  2. アクセスポイントのセキュリティ設定は "WEP" 暗号にする。
  3. クライアントの方で "ホーム/小規模オフィスのワイヤレスネットワークをセットアップする" を選んで必要情報を入力する。
  4. WEP キー番号が 1 以外の場合は調整する。

これにて Windows XP での各種設定や調整が思うとおりに動いて、ようやく快適な無線 LAN 環境となりました。

 

参考資料