美味しんぼ 福島の真実編 2 を読んで

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美味しんぼ 福島の真実編 2 を読んで

はじめて測った放射線の数値を見て心配になる、そんなことをそういえば自分も経験しましたっけ。

いよいよ福島の取材がはじまった山岡さんたち一行、白河で空間線量を測ったところ 0.34 μSv/h という数値を示しました。それを 24 時間 365 日で換算して 2.978 mSv/年になって…。

国際放射線防護委員会 ICRP の年間安全基準で定められている 1.0 mSv/年を超えていて慌てる部長代理。

 

そんな部長代理の様子を見て「弱気な奴らだ」と山岡さんは言い、それをすかさず奥さんから「そういう言い方はよくないわ。今は低線量の放射線の影響についてはまだ何もわかっていないのよ」というフォローが入り。

そんなやり取りしている様子を見ていたら、なんだか自分が初めてガイガーカウンターを持って測ってみていた頃の記憶が不思議とゆっくり思い起こされました。

 

初めての、ガイガーカウンターでの計測値

自分がガイガーカウンターを購入したのは、2011 年 11 月 12 日頃。ちょうどこの物語で語られている時期とも一致しますね。

その頃、神奈川県横浜市青葉区の自宅近所や庭先で 0.13 μSv/h 前後を記録していました。年間の放射線量に換算した場合、年間 1 mSv に達するには 0.115 μSv/h が計測されていることになります。

 

購入したガイガーカウンターは というガイガーカウンターで、美味しんぼの漫画から察するに、山岡さんたちと同じものを使っています。漫画の方はひとつ旧型ですけど、性能はどちらも同じと言われてます。

MKS-05 の特徴としては、計測が速いので急な放射線量の変化を直ぐに検知できることと、高い放射線量でかなり正確な数値を期待できると言われています。逆に、計測下限が仕様上 0.10 μSv/h からとなっていて、低線量には不向きになります。

 

はじめて持ったガイガーカウンターで見た 0.13 μSv/h という低線量、確かに計測下限よりは高い数値を示しているものの、実際のところは誤差の範囲かどうなのか。

そんなことを考えながらも、日常で 0.115 μSv を常に超えている様子を見て、これはすごいことが起こっているんじゃないかと感じました。

 

その頃の世間では「一日中ずっとそこにいる訳じゃないから、24 時間 365 日で 1 年換算するのは間違い」という主張が主流でしたけど、部屋の中でも 0.10 μSv/h 前後だし、線量の特別高い場所を選んでみている訳でもないし。

少なくとも「0.13μSv × 24 時間 × 365 日 ≒ 1.14 mSv/年」というのは、近所の放射線量として、ひとつの参考としては間違いないのでしょう。

 

描かれる福島値域の 2011 年 11 月時点での現状

美味しんぼの第二話では、福島の現状が淡々と綴られていますね。

福島市でもホテルの中なら 0.07 μSv/h で心配ない、外だと 53 μSv/h とか、それが風によって 0.15 μSv/h や 0.20 μSv/h にどんどん変化するとか。

 

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そういえば当時、空間線量が高いと噂されていた東海道新幹線・東京駅の北八重洲口からホームまでを 2012 年 2 月 27 日に計ってみたことがありました。

その時は、基本的には 0.08 μSv/h が計測されるものの、ホームで稀に何度か、急に 0.30 μSv まで急上昇することがありました。

ガイガーカウンターはノイズで急上昇するという噂もあったので、それがノイズに因るものなのか、それとも実際に放射線を計測しているのか、専門的な知識や勘を持ち合わせていない自分には、知る由もありませんでした。

 

それから今日までの日常の中で、突発的に 0.30μSv/h に達することは、ガイガーカウンターの電源を入れた直後以外では見たことがありませんね。

電源を入れた直後の 0.30 μSv/h も今やすっかり見なくなったので、少なくとも計測誤差を生むような放射線量が、2012 年の中旬くらいまでには存在していたことは確かに近いのかもしれません。

 

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福島県庁から歩ける距離のところにある街中でも 6.0 μSv/h が計測されて、年間に換算すると 52.5 mSv にも達するのに、住民がいくら要望しても国は避難奨励地点に指定しないなど、問題点が静かに語られています。

そして、新地町という海岸沿いでは 8 か月経っても津波の被害そのままに荒廃した景色が取り上げられていました。そんな景色を見る雄山の表情が印象的です。

それから松川浦の相馬双葉漁業協同組合に降り立った一行が見たのは、まるっきり何も無くなっている魚市場でした。

ひと通りの福島の復興できない様子を淡々と語る今回のお話を読みながら、なんだかため息をつくのと似ているような、何も言えない心地が広がります。

 

そんな折、雄山が提起した言葉で、今回の物語は幕を閉じます。

 

「復興も不可能な、この苦しみの本質はなんなのだ。士郎、おまえ、語ってみろ。」

 

果たしてその本質とはなんなんだろう。

漠然とした感情の中から、自分の中で感じている何かを見つめてみるのも、悪くはないかもしれないですね。

 

美味しんぼ「福島の真実」編 #2

著者 雁屋哲
掲載紙 週刊 BIG COMIC スピリッツ