UASP 対応の USB 3.0 ディスクケースを使ってみる。
Storage Device
USB 3.0 対応のディスクでも UASP 対応のものの方が速いという噂を聞いて気になっていたんですけど、このたび機会が巡って使う運びとなりました。
容量大きめのハードディスクを USB 3.0 で接続して、そちらに VMware の仮想ディスクを移して使うことにしたんですけど、移す前が SSD だったせいか、仮想 PC の動作が非常に遅く感じられるようになりました。
起動して落ち着けばなんとか操作できる遅さですけど、たとえば Windows Update が裏で動作してたりするとアプリをひとつ起動するにも数分以上かかったりして、なかなかつらい速度です。
そこで、そういえば以前に UASP (USB Attached SCSI Protocol) 対応の USB 3.0 ハードディスクを使えば速度が大幅に向上するという話を聞きました。
iMac Late 2013 + OS X 10.10.5 も UASP に対応しているそうなので、いよいよ今回それを試してみることにします。
UASP 機能を利用できるのは Intel Ivy Bridge を備える Mac で OS X 10.8 以上をインストールしている場合らしいです。
UASP 対応ディスクケース
今回は 玄人志向 GW2.5UASP-SUP3 という 2.5 インチ HDD ケースを使ってみることにしました。このケースは UASP 対応の USB 3.0 ケースで、2.5 インチの SATA 6G ディスクをケース内に搭載できます。
そしてここに、今回は WD Black 2.5 inch 750GB WD7500BPKX ハードディスクを接続します。
これまではこのディスクを 『黒角』OWL-ELS25/U3 という 2.5 インチ SATA 6G ディスクに対応した USB 3.0 ケースで使っていたのですけど、このケースは UASP には対応していませんでした。
WD Black WD7500BPKX ディスクは GW2.5UASP-SUP3 で使っても効果なし?
そんな WD Black 2.5 インチ HDD を、UASP 対応の玄人志向 GW2.5UASP-SUP3 ケースで使ってみたのですけど、結果として、速度はほとんど同じかむしろ僅かに低下してしまいました。
ディスク | ケース接続 | UASP | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|---|
WD Black 750GB (WD7500BPKX) | USB 3.0 | No | 86.1MB/s | 84.2MB/s |
WD Black 750GB (WD7500BPKX) | USB 3.0 | Yes | 84.9MB/s | 82.3MB/s |
ディスク WD Black 750GB (WD7500BPKX) の仕様自体は Serial ATA600 (SATA III) 対応で回転数も 7,200 rpm と、2.5 インチのハードディスクではそれなりに良いものを選んだはずなのですけど、それでも USB 3.0 と USB 3.0 + UASP との間での速度向上は見られませんでした。
そもそも UASP が有効になっているか
そもそも、ほとんど速度の変化がみられないので、もしかして UASP が有効になっていないかもしれないと思って調べてみることにしました。
調べ方自体はあまり良い方法が見つからなくて、とりあえず OS X に UASP を使うのに必要な機能が読み込まれているかを知ることで、接続しているディスクのどれかが UASP に対応していることを確認する方法を採ることにします。
それには OS X に付属のシステム情報(システムプロファイラ)アプリを起動して、そこの ソフトウェア
グループから 機能拡張
を選択します。
そうして、表示されたリストの中から IOUSBAttachedSCSI
を選択して、その中から 読み込み済み
の項目を確認することで、OS X システムで UASP が有効化されているかを判断できます。
今回の自分の環境では幸い、今回の UASP 対応 USB 3.0 ケース (GW2.5UASP-SUP3) を接続した時に有効になり、取り外すと無効になったので、このケースに対して UASP が有効になっていると思って良さそうです。
もし他に USB 3.0 接続のディスクを使っていた場合は既に有効化されているので、それを取り外して IOUSBAttachedSCSI
を無効化してから接続しないと、新たに接続したディスクで UASP が有効になっているかは判断できなそうな感じでした。
HDD は UASP なしで利用することに
そんな風にして、UAPI 対応のケースに入れ替えても速度が改善された様子のない WD Black 2.5 inch 750GB WD7500BPKX でしたけど、それと加えて新しいケースでは、ディスクの回転やアクセス音がなんとなく前より目立つような気がしました。
新しいケースでは全くネジを必要としないせいもあるのでしょうか、わからないですけどとりあえずケースによって音の印象も違ってきたりするんですね。
ともあれ結果、UASP の効果も見込めず、音も気になる印象なので、ハードディスクは今まで通り UASP なしの 『黒角』OWL-ELS25/U3 で使っていくことにしました。
UASP の効果があるのか確認してみる
そんなこんなで 玄人志向 GW2.5UASP-SUP3 と WD Black 2.5 inch 750GB WD7500BPKX の組み合わせでは効果が得られなった UASP ですけど、他のいくつかのディスクを使って効果が出るか確かめてみることにしました。
今回は手元で余っていた次のディスクを使って試してみました。比較を兼ねて先ほどのハードディスクも加えておきます。
メーカーと型番 | SATA 仕様 | 容量 | Read 仕様上 | Write 仕様上 |
---|---|---|---|---|
WD Black WD7500BPKX | SATA III 6Gb/s | 750 GB | (180 MB/s) | (180 MB/s) |
Intel SSD 320 Series SSDSA2CW080G310 | SATA II 3Gb/s | 80 GB | (270 MB/s) | (90 MB/s) |
Intel SSD 520 Series SSDSC2CW240A310 | SATA III 6Gb/s | 240 GB | (550 MB/s) | (520 MB/s) |
これらについて、おさらいになりますけど、次の2つのケースを使って速度比較をしてみることにします。
メーカーと型番 | 接続方式 |
---|---|
Owltech 『黒角』OWL-ELS25/U3 | USB 3.0 |
玄人志向 GW2.5UASP-SUP3 | USB 3.0 + UASP |
WD Black WD7500BPKX は効果なし
おさらいになりますけど、最初に試した WD Black WD7500BPKX は、どちらのケースともほとんど同じ速度になりました。
ディスク | ケース | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|
WD Black 750 GB (WD7500BPKX) | USB 3.0 | 86.1 MB/s | 84.2 MB/s |
WD Black 750 GB (WD7500BPKX) | USB 3.0 + UASP | 84.9 MB/s | 82.3 MB/s |
つまり UASP 対応ケースに入れ替えても改善が見られないという結論に終わりました。
Intel SSD 320 SSDSA2CW080G310 もほぼ効果なし
そして Intel の SSDSA2CW080G310 ですけど、こちらも UASP 対応ケースでも速度の改善は見られませんでした。
ディスク | ケース | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|
Intel SSD 320 Series 80 GB (SSDSA2CW080G310) | USB 3.0 | 258.1 MB/s | 91.0 MB/s |
Intel SSD 320 Series 80 GB (SSDSA2CW080G310) | USB 3.0 + UASP | 267.4 MB/s | 91.1 MB/s |
もっともこのディスクは SATA II 3 Gb/s までの対応で、そもそも USB 3.0 の 5 Gb/s に追いつかないことが主な理由かもしれません。
Intel SSD 520 SSDSC2CW240A310 で大幅な改善を確認
そして、もうひとつ余っていた Intel の SSDSC2CW240A310 を試してみたところ、いよいよこちらは大幅な速度改善が見られました。
ディスク | ケース | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|
Intel SSD 520 Series 240 GB (SSDSC2CW240A310) | USB 3.0 | 131.3 MB/s | 122.6 MB/s |
Intel SSD 520 Series 240 GB (SSDSC2CW240A310) | USB 3.0 + UASP | 376.6 MB/s | 206.3 MB/s |
こうして見直してみると、Intel SSD 320 のときと比べて、そもそも今回の Intel SSD 520 が UASP なしのときから読み込み速度がずいぶん伸び悩んでいるのが気になりますが、UASP 対応ケースに交換すると読み書きともに今までのどのディスクよりも速い読み書きが計測されたので、少なくとも UASP 対応による効果はディスクが良ければ十分期待できそうです。
Thunderbolt と比較してみる
ところで、USB 3.0 の規格速度は 5 Gb/s ですけど、それより速い規格速度 10 Gb/s の Thunderbolt というのがあります。
自分は CalDigit Thunderbolt Station CTS-US-60 を使っていたので、せっかくなので Thunderbolt 対応ケース Seagate Backup Plus Portable Thunderbolt Adapter - STAE128 との速度差も、幾つかのディスクで比較してみることにしました。
メーカーと型番 | SATA 仕様 | 容量 | Read 仕様上 | Write 仕様上 |
---|---|---|---|---|
Transcend TS512GSSD320 | SATA III 6Gb/s | 512 GB | (560 MB/s) | (530 MB/s) |
Intel SSD 520 Series SSDSC2CW240A310 | SATA III 6Gb/s | 240 GB | (550 MB/s) | (520 MB/s) |
Transcend TS512GSSD320 は UASP の方が速い?
まず、Transcend の TS512GSSD320 ですけど、Thunderbolt と UASP とで比較してみたところ、どうやら UASP の方が速いという結果になりました。Thunderbolt で HUB を介している影響があるのかは分かりません。
ディスク | I/F | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|
Transcend 512 GB (TS512GSSD320) | Thunderbolt | 157.9 MB/s | 133.4 MB/s |
Transcend 512 GB (TS512GSSD320) | USB 3.0 + UASP | 342.4 MB/s | 139.4 MB/s |
書き込みが若干向上したのもそうですが、特に読み込みが大幅に向上しているのが気になります。実際、このディスクを購入したばかりの3年半ほど前に Thunderbolt で 373.1 MB/s という速度を計測しているので、もしかすると今回は計測中に何かが邪魔をしていたりするのかも分かりません。
ちなみに書き込み速度は、3年半ほど前の Thunderbolt で 241.6 MB/s が計測されていました。Thunderbolt でも UASP でもそれを遥かに下回ってますけど、あれからずっとメインで使い続けていた SSD なので、もしかすると使い続けたことによる速度低下もあったりするのかもしれません。
とりあえず、少なくとも現状では Thunderbolt より UASP の方が良さそうだった、という結果になりました。
Intel SSD 520 SSDSC2CW240A310 も UASP が若干優勢?
それではもうひとつ、Intel の SSDSC2CW240A310 も Thunderbolt と UASP とで比べてみることにしたんですけど、こちらも結果は若干ですけど UASP の方が速そう、ということになりました。
ディスク | I/F | Read 実測 | Write 実測 |
---|---|---|---|
Intel SSD 520 Series 240 GB (SSDSC2CW240A310) | Thunderbolt | 365.6 MB/s | 215.0 MB/s |
Intel SSD 520 Series 240 GB (SSDSC2CW240A310) | USB 3.0 + UASP | 376.6 MB/s | 206.3 MB/s |
上に記した数値だけみると、読み込みは UASP が優勢、書き込みは Thunderbolt が僅かに優勢ですけれど、何度か試してみていると読み込みも書き込みも大抵 UASP が優勢になる印象でした。
まとめ
コストパフォーマンスは UASP が良さそう
Thunderbolt 対応機器はケースも HUB も USB 3.0 と比べてかなり高価な印象なので、今回の計測結果を見る限りでは、特に理由がなければ UASP で十分な速度が期待できそうな印象でした。
規格速度が 20 Gb/s の Thunderbolt 2 や 40 Gb/s の Thunderbolt 3、10 Gb/s の USB 3.1 を使うとどうなるかとか、もしも SATA の規格が 10 Gb/s を超えてきたりしたらどうなるかは、対応する機械を持っていないのでわかりませんけど、今のところは UASP が導入しやすくて良さそうです。
Mac 内蔵 SSD が圧倒的に有利みたい
ちなみに iMac Late 2013 に内蔵されいていた Apple SSD SM0256F の速度を計測してみたところ、読み込みが 726.1 MB/s で、書き込みが 633.1 MB/s という圧倒的な速度が計測されました。
こちらは3年半ほど前に計測したときは、読み込みが 716.0 MB/s で、書き込みが 672.4 MB/s だったので、あれから比べて僅かに低い速度が計測された様子ですけど、それでも当時から外付けディスクを遥かに上回る速度を計測していました。
つまり、速度を最大限まで気にするのであれば、最初の Mac 注文時から十分な容量の SSD を搭載するのがいちばん良い選択なのかもしれません。