第二級海上特殊無線技士の免許を取得してみました。

船舶免許

以前に何気なく漁師になる方法について調べてみていたときに、必要な資格として「小型船舶操縦士」と併せて「海上特殊無線技士」が挙げられていて気になっていたので、せっかくなので取得してみました。


船を運転するための "小型船舶操縦士免許" を取得したことについては、以前に こちら とかでも綴りましたけれど、その発端のひとつに「漁師って凄くない?」みたいな気持ちがあったりしたので、そのとっかかりの時点で併せて「漁師になる方法」を調べてみたりしていました。

それによると、漁船を操縦するために必要な「小型船舶操縦士免許」の他に、海上で同業者間で情報交換をしたり遭難時の救助要請などで無線を使うらしく、そのために必要な「海上特殊無線技士」という資格が必要になる様子です。

そんなふうにして「海上特殊無線技士」という言葉に出会った自分でしたけれど、その言葉の響きが気になって、無線について全く知識を持ち合わせていない状態から「第二級海上特殊無線技士」の免許を取得してみることにしました。

海上特殊無線技士

海上特殊無線技士というのは、取得することで海上における無線操作が許される、総務省が管轄の国家資格の様子です。 そんな海上特殊無線技士には3つの区分が用意されていました。

それぞれの区分によって海上における無線設備の操作範囲が法律で定められていて、その詳細は日本無線協会の 海上無線従事者 のページなどで確認できますけれど、とりあえず今の自分にわかる範囲で 極めてざっくりと 捉えてみると、次のような感じになるようでした。

区分 内容
レーダー級海上特殊無線技士(レーダー級) レーダーの操作
第三級海上特殊無線技士(三海特) レーダー級の範囲を含み、二海特よりも限られた範囲の海上無線
第二級海上特殊無線技士(二海特) レーダー級の範囲を含み、日本国内に限った海上無線
第一級海上特殊無線技士(一海特) 二海特の範囲を含み、日本国外での使用を含む海上無線

二海特と三海特では、使用できる周波数帯と空中線電力に違いがある感じらしく、とりあえず、日本国内の沿岸漁業を行う想定であれば「第三級海上特殊無線技士」や「第二級海上特殊無線技士」を取得しておけば足りる様子です。

これらの区分をより具体的にイメージするには、そのあたりがとてもわかりやすくまとめられている、東京湾海自法務事務所の 船舶無線免許 を読むと良いかもしれません。

無線機を使用するには無線局の届出が必要

そんな海上無線の免許は遭難時の連絡手段としても大事になってくるらしく、それなら「小型船舶の免許を取ったことだし、とりあえず持っておいても悪くないのかな?」と思って取得することにしたのですけれど、試験勉強を進めていくうちに、実際に海上無線を使用するにはそれを使用する船を「船舶局」として届け出る必要があることを知りました。

そうなるとつまり、自分の船を所有しないでレンタルボートで海へ出る自分には、どうやら海上特殊無線技士の免許を活かす機会はないということになりそうです。このあたりの免許事情については、MALU SAILING さんのブログ ヨットに必ず備えておきたい国際VHF無線 を読むとわかりやすい印象でした。

ともあれそんな感じで、自分にはとうぶん必要のなさそうな資格であることが判明しつつも、既に国家試験に申し込みを終えてしまった後だったので、これ幸いに、せっかくの機会なので勉強を進め、免許取得へと至ることになりました。

第二級海上特殊無線技士を受験してみる

第二級海上特殊無線技士を取得する方法には、独学で国家試験を受ける方法と、総合通信局長の認定を受けた団体が実施する養成過程を修了する方法とがあるようです。ただ、今回は小型船舶操縦士のときとは違って、自分の中では不思議と最初から「独学で国家試験を受ける」気分だったので、迷うことなくその方法で取得することにしました。

取得することにしたのは、無線操作が日本国内での航海に限られる「第二級海上特殊無線技士」です。ちなみに第三級ではなく上位のこちらを選んだ理由は、今回の発端である「漁師になる方法」を何気なく調べてみていたときに最初に見つけたのが「第二級」だったのと、海で遭難したときに遭難信号を送出できる DSC という機能が「第二級」なら使えることの二点です。何が起こるかも想像できない海に出る上で、何かのときに助けを呼べる手段は多い方が良いと思って「第二級」を選ぶことにしました。

免許取得までにかかる費用

第二級海上特殊無線技士の免許を取得するのにかかる費用は、今回の場合、受験する上で必要になる試験手数料の 5,663 円のほかに、合格後に免許の交付申請で必要になる印紙代 1,750 円、そして申請書を郵送で提出するための切手代 84 円と、返信用封筒に貼った切手代 404 円(簡易書留)の、合計 7,901 円でした。

それに加えて、受験時に受験票に貼る証明写真と、合格時に交付申請書に貼る証明写真、合計2枚が必要でした。また、交付申請のときに提出する住民票を取得するときの費用も必要でした。

受験日を決める

第二級海上特殊無線技士の国家試験を受けると決めたら、まずは試験を受ける日取りを決めていきます。 国家試験は定期的に開催されていて、自分が申込を行った の時点では「6月」と「10月」と「2月」の年3回になっていました。

自分が受験を検討したのは12月だったので、いちばん近い試験開催日は2月。 無線に関する予備知識の何もない自分が2ヶ月で合格できるようになるか不安でしたけれど、結果的には試験勉強を開始したのが試験3週間前、そこから新型コロナなご時世もあってけっこうみっちり勉強して期間的にはギリギリでしたけど、危なげなく合格できるくらいまでは知識を身につけることができました。

そんな感じで、勉強期間「3週間」は自分にはなかなか厳しい印象でしたけれど、自分と同じように無線知識のない状態から合格した 北海道の釣りブログさんの受験体験記 では「毎日30分の勉強で、1ヶ月あれば足りる」と記されているので、それくらいの感覚でも合格を狙える様子です。

国家試験に申し込む

受験日を決めたら、国家試験に申し込みます。

申込は、日本無線協会の 無線従事者国家試験申請システム で行えるようになっていました。受けようと思う日程の申込が開始されてから申込期限までの間にこちらから「第二級海上特殊無線技士」を選択して、申込手続きを進めていきます。

macOS の Safari は非対応?

このとき、自分は macOS の Safari で申込ページを開いたのですけど、試験申込書作成画面の入力欄をクリックしてもそこが入力状態にならなくて少し戸惑いました。 けれどそのまま tabキー を押したら、名前の入力欄に打ち込めるようになったので、そのまま tabキー tab で各入力欄を移動しながら、申込を進めることができました。

受験料の振込

申込が終わったら、試験手数料の振込です。 の時点では、指定された郵便局の口座に振り込むことになっていて、その際に「振込用紙の通信欄に整理番号を記載」する必要があるとのことでした。

通信欄に記載が必要ということで、郵便局に足を運んで振り込まないといけないのかとも思ったのですけれど、 試しにインターネットバンキング「ゆうちょダイレクト」を使ってみたところ、この方法でもちゃんと振り込むことができた様子です。通信欄に書くべき整理番号は「メッセージ」欄に記載すれば大丈夫でした。

そのようにして試験手数料を払い込んで、それから6日ほどで「状況紹介画面」からも振込が正しく行えたことを確認できました。

二海特の試験勉強

国家試験の申し込みと支払いを終えて正式に受領され、後にも引けなくなったところで、受験勉強を開始しました。とはいえなんだかんだで勉強を始める時期は遅れて、結局のところ試験まであと3週間という時点からの着手となりました。

用意した教材

今回、二海特の勉強をするにあたって用意したのは、やさしく学ぶ 第二級海上特殊無線技士試験 という書籍です。

こちらの本を選んだ理由は、評判がよかったというのもありますけれど、それ以外に選択肢がなさそうで、余地なくこれになった感じです。発行日も少しだけ古くて、手に入れた本は の第1版 第2刷発行のものになりました。

この本で勉強してみた所感としては、試験に出題される範囲よりも広く記載されている印象で、自分みたいな無線に関する予備知識のない人が勉強するのに向いていそうな気もしつつ、それでもぜんぜん知らないことが登場することも多かったので、予備知識はそれなりに端折りつつ、試験に向けた内容に絞ってまとめられていそうな感じがしました。

ただ、少し古い本なのもあってか、最近になって出題されるようになった問題がいくつか扱われていないこともある様子だったので、それを解けなくても合格点に届かないことまではなさそうなものの、この本での学習と合わせて過去問を解いて出てきた知らない問題を自分で調べて学習する必要はありそうです。

まずは本でひととおり、しっかり学習

そんな本を手にして、まずは本に書かれている内容をひととおり、しっかりと学習していくことにしました。

二海特は「法規」と「無線工学」の2科目が試験範囲になっています。勉強を始めて最初は、自分が何も無線に関する知識を持ち合わせていなかったため、何を言っているのかさっぱりわからないまま学習を続けていましたけれど、それでも「法規」の範囲をひととおり終えて「無線工学」に入ったあたりから、これまでに学習してきたことも含めてなんとなく言っていることがわかるようになってきた感じがするので、解らなくてもとりあえずひたすら学習を続けていくのが良さそうでした。

そうやってしっかり学習を進めて、本の内容をひととおり学習し終えたのは、勉強を始めておよそ2週間が経った頃合いでした。

最初からざっくり読み返す

ひととおりしっかり学習するのに少し時間がかかったので、最初の方をおさらいする意味合いも込めて、ここで本を最初からざっくりと流し読みしておくことにしました。

だいぶなんとなく、何を言おうとしているのかわかるようになっている手応えを感じつつ、本の中にたびたび差し込まれている練習問題をときながら、1日程度で全体を読み返すことができました。

過去問題集をひたすら解く

本もしっかり読み終わり、試験までのこり1週間と迫ったところで、二海特の過去問を解いてみることにします。

過去問は、電波受験界さんの 第二級海上特殊無線技士 過去の試験問題と解答 で公開されていたのを活用させていただきました。 ここから直近9回分の過去問を見ることができたので、それらを古いものから順に解いて、解らなかったり間違えたりした問題は、しっかり復習しておきます。

過去問1周目

そんな9回分の過去問を解いてみた結果、この時点でも平均して、法規で0問から2問程度の間違い、無線工学でも0問から4問程度の間違いといった感じでした。全て合格点ではあったものの、出題時期によって余裕だったりギリギリだったりと偏ったので、それなりに出題傾向が回ごとに違っていそうな印象でした。

ただ、うっかりすれば不合格になってもおかしくない正解率です。本で見覚えがあって思い出せない問題や、そもそも知らない気がするものもいくつかあったので、本やインターネットでしっかり復習した上で、改めて最初から過去問を解いて見ることにします。

過去問2周目

そうして臨んだ過去問の2周目は、法規は全ての回で全問正解、無線工学は全体のうちの3回で1問だけ間違えるという状況になりました。2周目にしてかなり安心感のある正解率になりましたけれど、自分は無線工学の原理をあまり理解できていないのもあってか、記憶がすり替わっていたりすると見直しても間違いに気づけないのが少し怖いところな気もします。

過去問3周目

改めて不安なところを復習してから臨んだ3回目の過去問は、法規も無線工学も全問正解でした。 この頃になると、間違えても見直しで気が付けるかもしれない予感もするようになってきて、自分の中でようやく安心感が生まれてきました。

改めて本を読み返す

この段階で、もう少しだけ時間に余裕があったので、本を改めて最初から読み直してみることにしました。

そうしてみると、法規の科目は、勉強を始めた頃とは打って変わって、明らかにスラスラと読んでいける印象でした。書いてあることのおおよそのイメージが掴めるようになってきたような感じがします。無線工学についても同様で、ただ、過去問で出題されていなかった事柄についてはやっぱり理解がもうひといき及んでいない感じもありました。

出題傾向を見ていると、自分が解いた過去問に出てこなかった内容が今度に受ける試験で出題される可能性もじゅうぶんありそうな印象ので、そういったいまいち解らない箇所を重点的に読み返すことはできたものの、実際にこれらが出題されたときにちゃんと正解できるかは不安を感じるところです。

改めて、過去問4周目

そして最後のそうざらいとして、過去9回分の過去問を改めて解いてみることにしました。

そうしてみると、楽勝かと思いきや、特に「法規」でちらほらと不安な問題が出てきたりしました。記憶がちょっと曖昧になっていて迷いつつも、きっと大丈夫だろうという心地で解く感じ。結果的には、完全に選択肢の記載ミスで1問間違えた以外は全問正解できたものの、見直せば記載ミスでの間違いにも気づけたはずなので、試験当日は見直しが大事になってきそうです。

試験当日

そうしていよいよ、試験当日の を迎えました。

会場を訪れてみると、広い部屋に少なくとも 50 人は受験に来ている様子です。座席は一部の科目が免除される人を除いて自由な場所に座って良いことになっていました。後で知ったことですけれど、この試験は中途退出する人がとても多く、退出可能時間になっても順番に退出することになる場合があるらしく、早く退出したい人はそれを踏まえて座る場所を決めたりするようでした。今回の自分が受けた試験でも、部屋の左側後方から順に退出が許されていました。

試験を解いてみた印象

実際の二海特の試験は、試験時間は1時間、そのうちの30分が経過した時点で中途退出が可能になっていました。

そんな時間の中で自分は、ゆっくり丁寧に時間をかけて解いて20分で、全ての問題を解き終わりました。それからじっくり2回見直したところで30分が経過した感じになりました。手応えとしては、知っている問題ながらもど忘れして記憶を手繰って解いた問題が2つ、そして過去問で類似のものを解いたことはあったものの、出題のされ方が違って解らなかった問題が1つ。そして過去問そのままの問題ながら、選択肢に手が加えられていて紛らわしかった問題が1つといった具合でした。

そんな具合だったので、大きな勘違いさえしていなければ普通に合格できるだろう、という手応えでした。

中途退出して試験終了

そして中途退出可能な時間を迎えて、これ以上は見直す必要もなさそうに思えて、そのまま退出して試験は無事に終了となりました。自分は最後の方の退出順番だったのですけれど、周りの人たちもほとんど全てが中途退出で会場を後にされていて、残って問題を解いている人は若干名といった具合でした。

解答が発表されるのは3日後の2月16日とのことだったので、その頃に改めて自己採点をしてみることにします。

二海特の合否発表

第二級海上特殊無線技士試験の合否発表は、後日にインターネットでの掲載と郵送通知の両方で行われました。その前には解答も発表されるので、合否確認に先立って自己採点もできるようになっていました。

解答発表

まずは2月16日、合格発表に先立って試験問題の解答発表が、日本無線協会の 試験問題と解答 ページにて、予告されていた予定時刻 16:00 ぴったりに公表されました。

問題用紙に書き留めておいた回答と照らし合わせてみたところ、法規も無線工学も全問正解でした。あとは受験番号の書き間違いみたいな大きなミスがなければ、合格できていそうです。

合格発表と合格通知

正式な合格発表は、今回は試験日から16日後の3月1日に、日本無線協会の 合格発表 ページにて、合格者の受験番号が掲載される形で行われるようになっていました。

さらにそれに先立って、合否通知が2月26日に郵送で行われていました。それが手元に届いたのは翌日の2月27日で、これを以って無事、今回の第二級海上特殊無線技士試験の合格が確実となりました。

二海特の免許を取得する

国家試験を受けて合格した場合、免許証の申請手続きを自分で行う必要があります。 免許証を受け取るまでの流れとしては、申請書を記載して、受験地を管轄する地方総合通信局に郵送などで提出、免許証が発行されるのを1ヶ月ほど待つ感じになります。

申請書を記載する

申請書の提出にあたって、申請書は「総務省 電波利用ホームページ」の 申請書等のダウンロード ページから取得できるようになっていました。

こちらから申請書をダウンロードして A4 白色用紙に印刷したら、必要事項を記載した上で、指定された額の収入印紙と免許証に使われる写真を貼って提出します。

申請書を提出する

提出は、今回は郵送で行いました。

提出時に必要な書類は、ダウンロードした申請書の記載例に書かれている通りですけれど、申請書と合わせて、氏名と生年月日を証明できる書類が必要だったので、今回はコンビニで住民票を取得して同封することにしました。

そのほかにも、免許証を郵送で受け取りたかったので、切手を貼った返信用封筒を同封しました。 返信用封筒の切手は、普通郵便での送付でよければ 84 円で大丈夫とのことでしたけど、簡易書留が推奨されていたので、そのための料金 320 円を加えた 404 円分の切手を貼っておくことにしました。

ちなみに余談ですけれど、切手と収入印紙を買うにあたって、郵便局では切手だけがキャッシュレスで買えるようになっていました。収入印紙は現金だけでしか取り扱っていないとのことだったので、キャッシュレスで買い物をしがちな人は少し注意かもしれません。

そうして申請書類を一式準備できたので、2月28日に、管轄の総合通信局宛に郵送しました。

免許証の受け取り完了

免許証の交付申請をしてから1ヶ月ほどで免許が交付されるとのことでしたけれど、今回の自分の場合は思いのほか早くて、それから13日後の3月13日に、簡易書留にて第二級海上特殊無線技士の免許証が到着しました。

ただし振り返ってみれば、この日が二海特の試験を受けてからちょうど1ヶ月が経過した日でもあったりして、受験から免許取得までにはそれくらいの日数が必要になってくる感じにはなりそうです。

まとめ

そんな感じで、第二級海上特殊無線技士の免許を取得することができました。

無線についての知識が皆無だった状態から、とりあえずみっちり3週間の勉強で、免許を取得するだけならじゅうぶんな知識を身につけることができた印象です。自分にはなかなか厳しい期間でしたけど、試験に慣れていたりして要領の良い人なら1ヶ月も見れば余裕を持って臨めるみたいなので、船に乗る人なら余裕のあるときに取っておいても良いかもしれません。

そんな感じで、今回は二海特の免許について綴ってみましたけれど、このほかにも船舶免許を取得したときの様子や、実際に船を操船してみたときの感想とかも順次記載してみているので、そんなあたりも気になる人は読んでみてください。